日経平均は1,110円安なのにTOPIXは上昇|11月5日の逆転を読み解く

導入

11月5日(木)の東京株式市場では、日経平均株価が1,110円安と大きく下落した一方、TOPIX(東証株価指数)は上昇して引けました。指数同士が正反対の方向に動く、珍しい一日です。

これは、11月2日(月)の「逆」の光景です。11月2日は日経平均が小幅安にとどまり、TOPIXがその約2.7倍の下落率となりました。本記事では、その差を生んだ仕組みについては11月2日の記事『なぜTOPIXだけ大きく下げたのか』で解説しました。今回は逆方向に振れた理由を、寄与度と個別銘柄の動きから読み解きます。

指数 11月2日(月)終値・前日比 11月5日(木)終値・前日比
日経平均株価 63,081.86円(−0.33%) 61,077.90円(−1,110.73円、−1.79%)
TOPIX 3,930.28(−0.88%) 3,940.39(+45.01、+1.16%)

11月5日の日経平均は4日続落で、終値は5月20日以来の安値水準となりました。寄り付きは62,384.73円と前日比196円高で始まったものの、AI・半導体関連への売りが続き、後場には一時60,786.19円まで下落しています。一方でTOPIXは終始プラス圏で推移しました。「日経平均が大幅安」と聞くと市場全体が総崩れしたように感じますが、この日の中身はまったく違います。

日経平均の下げは、ほぼアドバンテスト1銘柄だった

日経平均の下げ幅1,110.73円のうち、アドバンテスト(6857)1銘柄の押し下げ寄与は約1,097円でした。つまり、日経平均の下落はほぼアドバンテスト1銘柄で説明できてしまいます。

アドバンテストの株価はこの日、前日比14.71%安の29,485円まで急落しました。AI・半導体関連への売りが続く中、同じ半導体関連でも東京エレクトロン(8035)が9.42%安、キオクシアホールディングス(285A)が13.1%安と軒並み大きく下げています。

株探の集計による、日経平均へのマイナス寄与度上位は次のとおりです。

順位 銘柄 押し下げ寄与
1 アドバンテスト(6857) 約−1,097円
2 東京エレクトロン(8035) 約−460円
3 ソフトバンクグループ(9984) 約−234円
4 イビデン(4062) 約−177円
5 TDK(6762) 約−101円

上位5銘柄の押し下げ合計は約2,068円にのぼります。一方、プラス寄与の上位5銘柄(ファーストリテイリング、コナミグループ、トヨタ自動車、テルモ、バンダイナムコホールディングス)の押し上げ合計は約599円にとどまりました。値下がりした半導体関連の値がさ株が、日経平均を大きく引き下げた構図です。

なぜ1銘柄で指数が1,000円以上も動くのか。理由は日経平均の作り方にあります。日経平均は225銘柄の株価をもとに算出する「株価平均型」の指数で、株価そのものが高い銘柄(値がさ株)ほど指数への影響が大きくなります。株価が約29,000円のアドバンテストと、約3,500円のトヨタ自動車では、同じ10%の値動きでも日経平均への影響は約8倍違います。「指数が大きく下がった=市場全体が大きく売られた」とは限らない、という点がここに表れています。

TOPIXが上がった理由:トヨタの上方修正と買いの広がり

では、なぜTOPIXは上昇したのでしょうか。中心はトヨタ自動車(7203)です。

トヨタはこの日の後場(13時55分)に決算を発表し、2027年3月期の通期営業利益予想を3兆4,000億円から3兆9,000億円へ、5,000億円引き上げました。従来は前期比で減益の見通しでしたが、一転して増益見通しとなります。純利益予想も3兆2,500億円から3兆5,700億円に引き上げ、自社株買いの上限も従来の1兆円から1.3兆円(上限6億1,000万株)に増額しました。株価は前日比16.68%高の3,533円まで急騰し、自動車株も軒並み高となりました。

ここでも指数の仕組みの違いが効いています。TOPIXは東証プライム全銘柄を時価総額で加重する指数です。時価総額が国内最大級のトヨタが16%超も上がれば、株価水準の低さは関係なく、指数をしっかり押し上げます。実際、東証33業種のうち25業種が上昇し、業種別では輸送用機器が上昇率のトップでした。

さらに、買いは自動車だけにとどまりませんでした。東証プライムの値上がり銘柄数は1,130、値下がりは410と、値上がりが全体の約7割を占めています。不動産や小売りなどのバリュー株にも資金が入り、「売られたのはAI・半導体関連が中心で、それ以外は堅調」というのがこの日の実像です。時価総額加重で市場全体を映すTOPIXが上昇したのは、この広がりを反映しています。

対照的なのがトヨタの日経平均への寄与です。16.68%も上昇したにもかかわらず、日経平均への押し上げ寄与は約85円にとどまりました。株価水準が低いため、株価平均型の日経平均では影響が小さくなるのです。同じトヨタの急騰でも、指数によって「効き方」がまったく違うことが分かります。

11月2日との対比:同じ仕組み、逆の方向

11月2日の記事で解説した11月2日と並べると、構図がはっきりします。

  • 11月2日:値がさの半導体製造装置株が買われて日経平均の下げを小さくした一方、プライム銘柄の約3分の2が値下がりし、TOPIXの下落率が大きくなった
  • 11月5日:値がさの半導体株が売られて日経平均が大きく下げた一方、プライム銘柄の約7割が値上がりし、TOPIXは上昇した

主役の銘柄も、日経平均を支える側と引き下げる側が入れ替わっています。11月2日に上昇寄与の上位だったアドバンテストは、11月5日には下落寄与の断トツ1位になりました。

方向は逆でも、教訓は同じです。日経平均は値がさ株の動きに引っ張られやすく、TOPIXは市場全体の広がりを映します。どちらか一方だけを見ると、その日の相場を読み違えます。

まとめ

  • 11月5日は日経平均が1.79%安、TOPIXが1.16%高と、11月2日とは逆方向に指数が分かれました
  • 日経平均の下げ幅1,110円のうち、アドバンテスト1銘柄の寄与が約1,097円。株価平均型の指数が値がさ株に引っ張られた典型例です
  • TOPIX上昇の中心は、通期営業利益予想を5,000億円上方修正し16.68%高となったトヨタ。時価総額加重のTOPIXでは大型株の急騰が指数を押し上げました
  • プライムの値上がり銘柄は約7割、33業種中25業種が上昇しており、「日経平均の大幅安=市場全体の総崩れ」ではありませんでした
  • 指数の動きと市場全体の動きは別物です。寄与度や値上がり・値下がり銘柄数まで見ると、相場の実像が見えてきます

※本記事は2026年11月5日の市場動向を公開情報に基づいて解説したものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、過去の値動きや決算への反応が将来の株価を保証するものでもありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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Posted by Ish